審査結果発表
厳正な審査を経て受賞作品が決定致しました。
※別途、事務局から入賞者の皆さまのメールアドレス宛にご連絡いたしますので、しばらくお待ちください
ご挨拶
2011年3月11日 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた女川町。今回のキャビン建設予定地は震災前は女川で最も賑わいのある場所でした。
その場所を再び賑わいのある場所にしたい。その仕掛けの一つとしてプライベートキャビンデザインコンペの実施に至りました。
今回、私達の想像をはるかに超える139点の応募を戴き大変驚くとともに、女川町へ関心を寄せて頂いたことに嬉しく思っております。このコンペの提案書作成に当たっては、多大な時間と労力をかけられたことは想像に固くなく感謝に耐えません。審査に当たっては我々としても一つ一つの作品に真剣に向き合ってまいりました。
当社としても公民連携事業としての新たなチャレンジの第一歩となります。
このデザインコンペにご参加頂いた全ての方の今後のご活躍をご祈念申し上げ、主催者の挨拶とさせていただきます。
審査委員長 阿部喜英(女川みらい創造㈱代表取締役社長)
審査の経緯
審査員それぞれが今回、応募された139件の提案書を事前に精査し、一次審査通過作品32件を選定して審査会に臨んだ。長時間に及んだ審査会では一次審査通過作品を1つ1つ取り上げて審査員が相互に議論し、優秀賞、入賞、佳作、特別賞を選出した。
海に面した広場内のキャビンということで、広場にどう溶け込むか、空間の作られ方、デザインの個性、また限定された予算での実現性を考慮して提案を審査した。
選定された優秀賞の2つは、これらの審査のポイントを掴んでおり、また同じ広場内に一緒に建つものとしてのデザイン的な相性も良いと評価した。
小さなキャビンのコンペであるが実現する民間の建築として、デザインの提案性とともに事業性という視点も大事な見方となった。入賞に残った5作品の多くは優秀賞候補として議論されたが、優秀賞の2つはデザイン性、経済性、事業性から実現可能なものとして選ばれた。
入賞をかけて最後まで議論した7作品を佳作とし、特別賞(女川賞)1作品を決定した。
審査員の講評はこちらから
優秀賞(2作品)
安江怜史建築設計事務所+ コンフェット株式会社|onagawapenta
講評
アイコニックである。ありきたりの小屋ではないことが評価できる。
このキャビンが複数棟、この地に建って群になると面白い。
形状とコストが合っていると思われ、現実味も持っている。
壁が外側に倒れているおかげで、小さい内部空間でも広く使える工夫がなされている。
小さいが、女川町海岸広場のアクセントになりうる。買いたいという人が出てくるかもしれない。
女川町海岸広場の要素になっていくことが期待できる。
本コンペの趣旨が、住宅の提案ではなく、キャビンであることが押さえられている。コロコロした多角形の形状がかわいらしい。
内部空間も完成されているが、実施段階で工夫していくことで、さらなる進化を遂げることが期待できる。
独立性が高いが、外部に提案されている縁側も効果的であり、周辺環境と応答しやすい。
デザインの技術が高く評価できる。
狩野翔太 + 小谷栄人 + 中村哲平|桟橋キャビン
講評
シンプルな切妻屋根のプロポーションが良い。海の風景にフォーカスするというコンセプトを上手く表現できている。素材、プロポーションのバランスが良かった。
風景の中に端正にたたずむデザインが共感を生んだ。思いつきではないデザインであり、女川に対する洞察を、キャビンとして活かそうと努力しているあり方が評価された。
入賞(5作品)
審査委員長賞
畑貴博|ちいさな丘のあるプライベートキャビン
講評
オープンであり、かつプライバシーを確保する解決策の1つ。視線も重ならない。クローズな空間の作り方として優れている。周辺から孤立するイメージなので、外側のスロープが外部に開いていると良かった。
コストバランスを考えて、盛土高さを小さくする等を考えても良かった。土に埋まった建物は湿気が懸念される。水はけの問題も指摘される。
相澤賞
宮本皓生 + 住田亮真 + 松山幸太 + 竹下音 + 吉規朝香|結いの種を蒔く
講評
様々なアクティビティが想像できる。みんなで作っていくというコンセプトが良い。楽しみながら提案しているという印象
小野寺賞
坂野修平|カーテンで人と風景がなじむキャビン
講評
形状が面白い。ランドスケープの提案となっている。
カーテンで仕切るというアイデアは、風景を創る方法として面白い。仮設的な設えで空間をゆるやかに仕切る提案となっているのは評価できる。カーテンの素材の選択が重要となる。
カーテンが風でゆらめく様は面白い。カーテンを閉めた時に、どう使うのかが課題。
東賞
杉浦 岳|海辺のえんがわ
講評
海辺の景色は水平方向に広がるため、風景全体をパノラミックに見せるのが自然な解。無料の公園施設のデザインとしては面白い。構造物の背が大きいと死角を作ってしまうので、スリットを入れる等の工夫が必要。
宇野賞
小林勇斗|在りし日へ導く二本の軸線
講評
応募作品の中で唯一、土地の記憶を読み解こうとする意図を評価。
建築物の提案として、図面への落とし込みの技術を磨くことが必要。
特別賞(1作品)
女川賞
倉澤賢太郎 + 川原颯介|響海堂
講評
素直に楽しい提案。
佳作(7作品)
山田 寛|回転する壁をもつ小屋
講評
可変性が面白い。いろんな展開ができるアイデアとして面白い。提案の見せ方も優れている。周辺環境との関係性が切れているように見えるのが惜しまれる。
山本健太郎|海と星を感じる小屋
講評
職人でなくともセルフビルドできそうで、キャビンにはリアリティがある。しかしランドスケープの提案が過大。屋根の上に昇るスロープの意図は読み取れるが、それがこの提案に必要だったかに疑問符が付いた。
野田 陸|日の小屋
講評
オーソドックスなプラン。この空間で、ぼーっとしたくなる提案である。
日高恵理香|海辺の三ツ山
講評
テントのような居場所を、ハードな素材で作る提案のうち、綺麗なキャビンの提案。内部に入った時のワクワク感がありそう。夜の風景が魅力的。 格子はコストアップ要因となるが、これが無いと意味が無い提案。シェルターとして使うことを考えた場合に雨天時の過ごし方に課題がある。
木村 圭|青を切りとる
講評
シンプルで潔いプランである。風景を切りとって見せるのは面白い。アート的であるが、既視感もある。
内部空間を工夫することできる。
吉岡 昇一|縁のまわる小屋
講評
大きな屋根の下に小さな小屋があるという解き方により、使いやすそうな印象を与えている。しかし屋根の下に屋根を作るのは、コスト制約が強いこのプロジェクトでは不利なので、屋根を張る場所を限定することや、仮設的なタープを張る等の工夫もあり得た。メリハリを付けると良かったのではないか。これだけの広いデッキがあると、広場が使いやすくなるという姿を見せてくれている。
星野学人 + 松尾勇弥|海辺の切妻テント
講評
三角形で解いた提案がいくつかあった中で、選ばれたのがこの作品。もしこれが建っていたら、料金を支払って使ってみたい。
内部空間のテーブルの寸法が大きすぎて邪魔かもしれず、それより窓から見える景色を演出する方法を突き詰めると良かった。 窓の水仕舞や屋根の頂部の納まりは要検討事項。
一次審査通過作品(32作品)
大田司|空気浴のキャビン
(講評)楽しい。風景の切りとり方が優れている。使っている様子は面白くなりそう。このデザインが複数棟並ぶと面白い。
田中翔太|すみっこステーション
(講評)個性が乏しいのが惜しい。コストは納まりそう。内部空間が小さすぎて使い勝手が悪い。周辺環境との関係をブラッシュアップするともっと良くなる。
長嶌史明|LIBRARY CABIN
(講評)キャビンの原型といえるオーソドックスな提案。
後藤 真/後藤真建築設計事務所|交差点に佇むキャビン
(講評)囲い込まないタイプの1つとして注目。外部環境を取り込みやすい提案。アクティビティの提案もあり良かった。家族やグループで使う空間となりうる。シェルターとしての役割を果たすためには、建具が必要だったのではないか。外構の表現が、この場所に合っていないのが惜しい。
原田秀太郎 + 中村魁|女川をまとう ドッグキャビン
(講評)オーソドックスなプラン。アクティビティの提案があることは評価できる。
伊藤聡宏 設計考作所|Tube Onagawa
(講評)アイデアとして面白い。海に向いた軸も良い。外壁に細工すると面白い。無料の公園施設としては良いが、有料プログラムとなりえるかは、懸念された。
ズトチデザイン|TAKAYUKA
(講評)貸出しやすいプラン。プロポーションのバランスが悪く、構造面が不利。1スパン減らすと違って見えたかもしれない。
合同会社ビーバー フォレストアウトドアブラントmaruta|「雲ノ庵 / KUMONOIORI」それぞれのウェルビーイングが育まれる場ー丸太をデザインアイコンとしたグランドデザイン・フォースプレイスという概念の提案ー
(講評)有料でも借りてぼーっとしたくなるプラン。ハイカー等がのんびりできそう。小ぎれいすぎず、奇をてらいすぎずのデザインとなっている。コストを省略することはできそうなプランである。
team OYW|「外」へつながるキャビン
(講評)過ごし方の提案がわかりやすい。屋外空間も十分に使いこなせる。母屋を簡素にすることもありうる。
橋本翔太郎|切り取る小屋
(講評)プライバシーを確保しつつ、外部に開く方法の提案として面白い。区切られているため貸しやすそうだが、プライバシー性が強すぎる。海側の背が低くても良かった。この場所に建つべきものか議論が分かれた。
園田慎二|PERGOLA CABIN
(講評)他にない1人の居場所としてのアイデアは面白い。ただし、このアイデアを実現して良いのかは議論が分かれた。
足立顕一 + 荻野悠|つながるキャビン
(講評)形状がシンプルで良い。室内で閉じこもりたいニーズと、外部とつながった解放感を得たいニーズの双方を満たす提案であり、多様なニーズに応えられる。
吉田祐介、辻村修太郎|boundary cabin – 私と公のあいだにあるキャビン
(講評)完成した後、管理しやすそう。形状が面白く、女川町海岸広場のアクセントになり得る。壁材のコストが懸念されるため、素材は要検討事項。
姚雄翊 (Hsiung-I Yao)|迴
(講評)高原に建っていそうな綺麗な建築。この場所に合っているかに疑問符がつく。
黒瀬直也|女川のサンカクキャビン
(講評)完成した後、管理しやすそう。これが女川町海岸広場にあると、楽しそう。コストオーバーが危惧される。
今井達也 + 大野めぐみ + 長谷川将太郎 + 森祐樹 + 山口裕太郎|海辺のシネマ・ガーデン
(講評)コストオーバーが危惧される。
鴇田真輝|DOMAGOYA ONAGAWA
(講評)区切られた領域の作り方として面白い。この空間構成には、可能性が感じられる。建築物としてはオーソドックスであり、もうひと工夫があると良かった。